オーストラリア ― 静かに磨かれてきた少数派の味

午後の店内は、少しだけ明るい。
窓の外の光が、カップの縁をなぞる。
あなたが席につくと、
店主はいつもより軽い調子で言った。
「今日は、
“意外と知られていない国”の話をしよう。」
テーブルに置かれたのは、
オーストラリアの豆袋だった。
大陸の国の、静かな一杯
「オーストラリアって聞くと、
コーヒーの産地ってイメージ、あまりないよね。」
確かにそうだ。
でも、
この国のコーヒーは
思った以上に表情が豊かだという。
ナッツやチョコレートのような、
落ち着いた甘さ。
強すぎない酸味。
その奥に、
甘い柑橘やフルーツの気配が
そっと顔を出す。
「派手じゃないけど、
丁寧に整えられた味。」
店主は、
そんな言葉を選んだ。
長く、揺れ続けた歴史
オーストラリアでのコーヒーづくりは、
実は200年ほど前から続いている。
島での栽培、
気候との試行錯誤、
好況と不況の繰り返し。
「ずっと順調だったわけじゃない。」
それでも、
ここ30年ほどで流れが変わった。
収穫に機械を取り入れ、
産業として続ける工夫を重ねてきた。
派手な拡大ではなく、
“続けるための選択”。
その姿勢が、
この国のコーヒーの味にも
にじんでいる気がする。
受け継ぐものと、新しい挑戦
昔から育てられてきた木がある。
素直で、
どこか懐かしい味わいを生む品種。
それに加えて、
より安定した品質や収穫を目指した
新しい品種も植えられてきた。
場所を変え、
島へ渡り、
条件を変えながら。
「古いものを残しながら、
少しずつ更新していく。」
そんなやり方が、
この国らしい。
想像している焙煎
もし、
この豆を焙煎するとしたら。
強く焼いて、
輪郭を太くするよりも。
中くらいの火で、
甘さと香ばしさを
ゆっくり引き出す。
ナッツやチョコレートが
前に出すぎないように。
でも、
フルーツの気配が
消えてしまわないように。
「整える焙煎、かな。」
店主は、
そうつぶやいた。
翡翠の隠れ家では、まだ
この豆を、
翡翠の隠れ家で扱うかどうか。
それは、
まだ決めていない。
生産量はごくわずかで、
世界の中では少数派。
でも、
だからこそ。
急がず、
丁寧に向き合う価値がある。
オーストラリアのコーヒーについて(やさしいまとめ)
- 世界全体では、ほんのわずかな生産量
- ナッツやチョコレートのような落ち着いた味わい
- 甘い柑橘やフルーツの気配も感じられる
- 収穫期:6月〜10月
- 丁寧に続けるための工夫が重ねられている国
今日も、
カップは出てこない。
でも、
オーストラリアのコーヒーという言葉に、
「静かに磨かれてきた味」という
輪郭が残ったなら。
この旅は、
それで十分だ。
ここではいつも、
コーヒーは
味になる前の物語から始まる。


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