【オリジナルストーリー】ボンボヤージュ4/4

オリジナル長編物語

「翡翠の隠れ家」を運営するたーです。

新プロジェクトとして、コーヒーを飲みながら気軽に読めるオリジナルストーリーをスタートさせています。いままで投稿した物語は全て1話読み切りのものでしたが、おかげさまで反響がよかったので少し長めの物語を考えてみました。

今回は(ボンボヤージュ)最終話です。なんとか書き切りました💦

おたのしみください。

ボンボヤージュ

そして未来

修平は休日に久しぶりに訪れたカフェで、予想もしない出会いを経験した。そのカフェは、普段通り過ぎることのない場所だったが、何となく足が向かい、店内に足を踏み入れると、木の温もりが広がる静かな空間が彼を包んだ。人々がゆったりと時間を過ごしていて、どこか穏やかな空気が漂っていた。

カウンターに座り、いつものようにコーヒーを頼んだ修平は、目の前に座っていた女性にふと目を向けた。彼女はスマートフォンを置き、ノートに何かを書きながら静かにコーヒーを飲んでいた。彼女の姿勢は、どこか余裕が感じられ、自然に人を惹きつける魅力があった。

ふとした瞬間、彼女が目を上げた。視線が交わった。少しだけ微笑みながら、彼女が話しかけてきた。

「最近、よくここに来るんですか?」

修平は驚きながらも、自然に答えた。「いや、初めてなんです。でも、いい雰囲気ですね。」

彼女はにっこりと笑った。「そうですよね。私もここはよく来るんです。静かで落ち着くから。仕事の合間に、一人で考えごとをするには最高の場所ですよ。」

その一言が、修平の心に少しだけひっかかった。考えごとをする時間。あれほど、無心で時間が過ぎていくのを求めていた自分にとって、それはまさに理想的な時間だった。

「あなたは、何か大きな決断をする時、どうやって考えますか?」修平がつい聞いてみた。

彼女は少し考えてから答えた。「私は、無理に答えを出すのではなく、時間をかけて少しずつ、自分の心に問いかけます。それが一番大事なことだと思っているんです。」

その言葉が、修平の中にひとしずくの水がしみ込むように響いた。彼女の落ち着き払った答えに、彼は何かを感じた。このカフェでの出会いが、また新しい気づきを与えてくれたように思った。

「心に問いかける。」そのシンプルな言葉が、修平にとって大きな意味を持つことに気づいた。彼がこれまで日常に追われて、自分の内面と向き合うことを怠っていたのは、少しもったいないことだったのだと感じた。

その後、二人はお互いに少しずつ自己紹介をしながら会話を楽しんだ。彼女はフリーランスのライターで、自分のペースで仕事をしていると言った。そのライフスタイルに、修平は少し憧れのような感情を抱いた。彼女は、自分の人生を大切にし、無理に周囲に合わせることなく生きている。

「私も少し、自分らしい生き方をしてみたくなったんです。」修平は自然とそう言っていた。

彼女は静かに微笑みながら、「それがいいんですよ。自分らしく生きることで、周りの人にも良い影響を与えられると思います。」と言った。その言葉が、修平の心に温かな光を灯した。

その後、二人はしばらく一緒にコーヒーを飲みながら、人生についての話を続けた。修平は、どんどん心が軽くなっていくのを感じた。彼女との会話が、彼にとって新しい風を吹き込むようだった。

帰り道、修平は再び心の中で自分に問いかけた。「これから、どう生きていこう?」そして、彼は自信を持って思った。「自分のペースで、自分らしく生きていこう。」

その夜、修平は家に帰ると、以前は考えなかったようなことをやってみたくなった。今度の週末には、何か新しいことに挑戦してみよう。例えば、一人で旅に出るのもいいかもしれない。自分の内面と向き合う時間を作ること、それが今の修平にとって大切なことだと感じていた。

そして、彼は深く息を吸い込みながら、自分の未来が明るく感じられることを確信した。新たな一歩を踏み出すこと、それが自分を変える最初の始まりだと。

その瞬間、修平の心は、どこか遠くにいる未来の自分と繋がったような気がした。そして、彼は確信を持って言った。「これからの人生、きっと素晴らしいものになる。」

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